『首を振れ』って何? 正しく周りを見るということ
赤べこのように首だけ振る選手たち
ジュニア年代で良く言われる
『首を振れ』(周りを見ろ)ってやつの話です
そう教えているコーチは沢山いると思いますが、そんなコーチに2つ質問です
Q1 首を振って、何を見るのですか?
Q2 周りを見るタイミングはいつですか?
Q1は、『周り』『味方の位置』『相手の位置』『スペース』など回答されると思います。
360度ピッチ全体をその一瞬で見ろってことですか?
Q2については
『ボールを受ける前』とかの答えがかえってきますかね
だから、パス練習のトラップの前に『首を振れ』と声がけするんですよね
では、実際に自分で実践してみて下さい
絶対できません
それを小学生に普通に習慣付けろと言っている
選手達は何を見ていいかわかりません
だから、言われた通り首を振るだけの奇妙な動きになるのです
『いつ』と『何を』見れば良いか
先に書いたように、ボールが来るまでの一瞬でピッチ全体が把握できればそれに越したことはないです。
しかし、常人では全てを見ることはできないので優先順位を付けます
『いつ』見るかは、効率の良いタイミングがあります
『何を』見るかも3つのシチュエーションにより分けることで見るべき項目がグッと絞り込めます
『何を』見るべきか
3つのシチュエーション
試合中の状況、ポジションにより下記3つのシチュエーションに分けて説明します
①ボールが直接来ないとき
②ボールを受けられるとき
③ボールが自分に向かってきているとき
です
①ボールが直接来ないとき
ボールから遠い、相手が間にいるなど直接ボールに絡めないときは
『ボールを受けられる場所』『味方にスペースを開けるための動き』を探します
見るべきところは自分の周りより、広範囲でスペースを見る感じです
②ボールを受けられるとき
ボールホルダーから近く、自分にボールが来る可能性があるポジションでは
『ボールが来たら次に動くスペース』を確認するために周りを見ます
自分でボールを動かせそうな時は、相手の位置スペースがあるかを、パスを選択する時は味方へのパスコース、シュートを選択する時はシュートコースと相手DFとGKの位置など、見る対象は①より具体的になります。
その情報の中から最も有効なものを選択するようにします
③ボールが自分に向かってきているとき
②で選択した動作が実行できるかボールが来るまでに再度スペースを確認します
DFがスペースを埋めてしまったなど選択した通りにいかないようならキャンセルし違う行動をとるようにします
この時はイメージしたスペースとその周りの相手(味方)を見るようにします
このように自分がいるポジション・シチュエーション毎に整理することで見るべきものを減らすことができます
まずはここからスタートなのですが、これでもかなり難しいと思います
FWよりDFの方が相手のよせが遅く考える余裕があります。また、中央よりサイドの方が見るべきスペースが限られる(サイドラインを背にして180°で良い)ので難易度は低くなります
最初に慣れるためにはサイドバックが一番良いと思います。同じようなことを漫画のアオアシでも書いてありましね
『いつ』見るべきか
上記の『何を』見るかは 最近色々なところで書かれてきたので聞いたことがある人は多いと思います
では、『いつ』見るべきか
これは答えがなかなか見つかりません
そんな中、答えらしいものが『BE YOUR BEST』といOculus(VR)のサッカーシミュレーションソフトの説明書(英語)に書いてありました
説明書によると
ボールから目を離し周りを見るタイミングは
・パス等でボールが離れた時(味方、相手共)
・味方や相手がドリブルをしている時
逆にボールを見るときは
トラップする時(厳密には視界に入っていればOK)
と書いてありました
このソフトでは、ずっとボールばかり見てると減点されます
VRのゴーグルを被って行うのでどこを見ているのか判定されます
説明書の通り 『ボールが離れた時周りを見る』と点数が高くなります
実際自分がVRでやってみると、ボールばかり見てしまいます。
ボールを受けてから周りを探すとすぐに相手に詰められボールロストします
途中、相手と味方の位置を問われる問題なんかも出されたりします
小学校から40年間近くサッカーをやってきて初めての感覚です
所詮ゲーム 本当にそのタイミングでボールから目を離して良いのか?と半信半疑でしたが、鎌田選手のプレーをみて納得しました
鎌田選手の周りを見るタイミング
冨安 「大地君がスペースを見つけて、ボールを受けることは得意。常に見てとも言われている。シントトロイデンで一緒にやっているし、彼のクオリティーは使わないと世界的に見ても、もったいない。どれだけ彼がボールを触る回数を増やせるか、今後の日本代表にとって大事なことかなと思います」
9月23日デュセルドルフでアメリカとの国際親善試合終了後の富安選手のコメントです
世界的に見ても使わないともったいないという、鎌田選手のクオリティーとは何かじっくり検証してみた
鎌田選手は
①味方、相手がボールを離した時
②味方、相手がドリブルを始めた時
③自分に向かってパスが出た時
必ず、首を振って周りを見ています
自分がボールをもらえない場所でも、相手と味方がボールを離した時必ず首を振ってどこかを見てます
毎回、毎回、どんな時も ボールが動くたび 癖のように周りを見ています
同じように マンチェスターシティーのデブライネ選手のプレーも気にしてスローで見返しましたが、同じタイミングで見ていました
果たしてこれを 誰でもできるようになるのか?
うちの次男(J下部U15所属)にこの話をやんわりとし、出来るかどうか聞いてみました
サイドバックなので時間と見るスペースが限られるポジションなので出来ると思っていましたが、結構難しいそうです
ボールをもらう前は意識すれば見る癖がつきそうだけど、ボール自分のところに来る瞬間に行きたい場所を再度見て実行できるか判断するのがキツイそうです。
でも何度か認知できた時はファーストタッチで前に進むことが楽にできたそうです。
次男のチームの10番の選手はそれがほぼ完璧にできているように見えます。
だからいつも楽にボールを受け、相手の譜背が来る前に裁き、ロストをほとんどしません。
さらに彼は 守備の時もそれができているように思えます。だから、誰よりも早くボールに寄せピンチを防いでくれます。
海外のサイトを頑張って英語を読むと、このタイミングで周りを見ることはディフェンスでも重要だそうです
参考動画にあったのは、カウンターで戻りながらのディフェンスで、相手がアーリークロスを入れた瞬間、戻りながら首を振り中のスペースを確認、すぐに体の向きをかえフリーの相手選手に寄せシュートをブロックする神業的なものもありました
まとめ
以上のように 『首をふれ』という指導では そのまま首を振る選手が育っていきます
大切なのは
以下のボールが動いた時に顔を上げ 周りを見る癖をつける
①味方、相手がボールを離した時
②味方、相手がドリブルを始めた時
③自分に向かってパスが出た時
3つのシチュエーションで見る対象を変える
①ボールが直接来ないとき
②ボールを受けられるとき
③ボールが自分に向かってきているとき
周りを見るということはとても奥が深く 指導するのは大変です
コーチだって出来るかどうかわかりません
でも、ロジカルに考え 出来るところからチャレンジしていけば徐々に身につけることができると思います
さらに これは身体能力に関係のない技術です
これが出来てくるとサッカーが全く違うものに見えてきます
ぜひ チャレンジしてみてください