8人制ビルドアップに必要な練習方法

前回、J下部、強豪クラブのビルドアップ例を書きました

ビルドアップの形はいろいろありますが、どこも共通しているのは『数的優位』を作り確実にボールを『前に運ぶ』ということです

後方からボールをつなぐビルドアップといえば、スペインのバルセロナをイメージされると思います。バルサメソッドにはボール回しが良く出てきます。

書籍やWebでもバルサメソッドの練習方法が沢山紹介されています。

しかし、ほとんどのものは形だけで本当のコンセプトを解説されていません。

なぜなら、練習メニューばかり見て真似るばかりで、最も重要なコーチの練習中の言葉、声がけ(コンセプト)が抜けてしまっているからです。

先日 長男がエコのメソッドのトップエリートキャンプに参加しスペインのコーチから直接指導を受けました。スペインのコーチ一人一人に通訳が付きその場で直ぐに訳して伝えていました。(一部の通訳はかなり偏った人もいましたが)その時の話も踏まえビルドアップに最適な練習メニューを解説します

 

判断を伴うボール回し

難しいシステムの練習は必要ありません
『判断』する力を鍛えるトレーニングが必要です

そのトレーニングとは ボール回しです

普段のボール回しに

『プレッシャーがある時はダイレクト』
『フリーな時はトラップ』
『パスはフリーな味方へ出す』

このルールを徹底させます

 

普段のボール回しではダイレクトパスがつながると面白くなり数本連続でダイレクトパスを通したくなりますが、それでは練習になりません

例えば42のボール回しで 自分がフリーな場合 他の3人のうち2人はマークがついている状況です。自分がフリーなのにダイレクトで他の人にボールを出すとしたらパスコースは一つしかありません。

 

さらにダイレクトで受けた人がダイレクトパスをしたら?戻す以外相手が付いているところにパスを送ることになり、自分から危険なところにボールを入れることになります。

自分がフリーな場合、トラップをして相手を1人おびき寄せればフリーな味方は2人になり安全なパスコースは2つに増えます

ボールをもらう前に周りが見えていないとこの判断はできません。

慣れるまでは『フリー』なのか『危険』なのか、コーチと周りの選手は声で教えてあげて下さい。

ボール回しで相手のプレッシャーかけられ、体を張ってボールをキープしたり、技を使って相手をかわしピンチを抜け出す。一見、「ナイスプレー」「よく頑張った」と褒められるような状況ですが、今はそういう練習ではありません。

囲まれてしまうということは、『フリーならトラップ』『プレッシャーがきていたらダイレクト』という判断が出来ていない、もしくは判断を間違えたということになります

自陣からのビルドアップとは、相手陣地まで安全なルートを選択する。ダメならやり直すという判断が必要です。

ルート選択で判断を間違えると相手陣地まで辿り着かないばかりか一気にピンチになります

何気ないボール回しのルールですが、これを意識するだけで攻撃側かボール保持する時間は圧倒的に長くなります。

 

前に進める ボール回し

また、ボール回しです

『スペイン人は本当にボール回しが好きですよねえ』
『まだ、ボール回しやってますよ』

スペインのコーチが言っているスペイン語がわからず、外から見ているとそうかもしれません。

しかし、同じボール回しに見えても目的を与えることで全く違う練習です

さっきのルール付きボール回しに、『方向』を追加します

上記のように6対3のボール回しの場合

#1と#2は、反対側の#5と#6がいるスペースへボールを運ぶことを目的とします。

実際の試合で言うと、DFラインからFWへボールをつなげる、ビルドアップです。

 

はじめは何も言わずに、やってみてください。

おそらく#1#2は成功率の低い縦パスを#5#6に送ろうと試み何度も失敗すると思います。

これこそが、よく育成年代で見られる『放り込み』です。

相手だって縦を通させないように網を張って狙っているのだから、闇雲に縦パス入れても通るわけが無いのです

しかし、この練習は『数的有利』の状況です。攻撃側は6人中3人がフリーな状況です。普通に考えたら6 対3ならボールを奪われることは無いのです。

重要なのは#3と#4の位置と判断です。

通常のボール回しでは#3と#4は位置をあまり変えずにボールを要求すると思います

しかし、一つ手を加えると圧倒的にボールを動かしやすくなるのです。

 

サイドを使ったビルドアップ

#3と#4がサイドに開き下がります。

そうすると自陣で42の状況が生まれます。

そして、#3#4どちらかにボールが渡り前を向ければ、ゴールの#5#6へ2つパスコースに対しDF1人しかいないという状況で楽に前線につなげることができます

 

では 実際にやってみます

#1は前進するために#3へボールを出します

#3の近くにはDFがいるのでプレッシャーを掛けに来ました。#3は練習のルールに従いダイレクトパスを選択しようとします

しかし、ダイレクトでのパスコースがありません

しょうがないので#6へ一か八かのロングボールを選択します

待ち構えていたDFに簡単にボールをカットされてしまいました

 

さて、この場合 コーチはどういう声を掛けますか?

#3に「闇雲にパスをするな」「無理なら一旦ボールを戻せ」「そこは体を張ってキープしろ」ですか?

#1がボールを持っている状況は下記の通り

#1はFREE な味方が他に2人いるのに、自分がFREEなのにFREEではない#3にパスを出してしまいました

この場合、判断を間違えたのは#1です

『パスはフリーな味方へ出す』フリーじゃない味方へパスをした

という判断ミスがありました

その結果 簡単に相手ボールになってしまいました

リカバリーは#3もするタイミングがありました
ボールを受けた時『プレッシャーがあるのでダイレクト』『パスはフリーな味方へ出す』というルール通りにFREEの#1にボールを戻せば#1の判断ミスは取り返すことができました

しかし、#1と#3の2人の状況を比べると、フリーでボールを持っていた#1の方が判断は容易にできる状況でした。なので、コーチとしては#1の判断を指摘する必要があります

このワンプレーでは1つの簡単な判断ミスと、2つの難しい判断ミス、合計3つの判断を誤ったことになります

この判断をエコのメソッドのスペイン人コーチは的確に指摘をしていました

 

以下は正しい判断の例です

この状況で #1がパスを出せるのはFREEの#2か#3になります
#1が余裕があり相手DFをおびき寄せることができればもう1人FREEの味方を作ることもできます

相手DFの位置を見ても 左側に偏っています

そのため、安全に運ぶためには右側を選ぶのが正しい判断といえます

#1はFREEの#2へ横パスを入れます

#2はフリーなのでトラップをし、ボールをキープします

#2に対して #6への縦パスを警戒していたDFが#2にプレッシャーを掛けて来ます
それにより#2は完全なフリーでは無くなりますが、#6がフリーになります

ゆっくりと周りを見ることができる体制でボールを保持していた#2は相手DFの動きを見てFREEの#4へボールを入れます

#4は前線にボールを動かします

その時#4の前には3対1の状況が生まれています
自分で前線にボールを運ぶ、FREEの#6か#5にパスを出す
3つの選択肢が生まれています

しかし、判断が遅れたため DFが戻り前線へのパスコースが防がれ、自分にもプレッシャーが掛けられしまいました

こうなると このまま#4がボールを前線に運ぶことは難しくなります

ここで、『パスはフリーな味方へ出す』という判断が必要になります

FREEなのは前ではなく 後ろにいる#3と#1 逆サイドの#3です

ここでは確実に近くにいた#2にボールを戻しました

「後ろに下げるな!逃げるな!」と言われそうですが、ここはまだ自陣だと考えてください。
自陣でボールをロストするより、もう一度マイボールでビルドアップをやり直すという『判断』を#4とチームが行ったことを評価してください。

しかも、このやり直しは 単なるやり直しではありません

#2にボールを戻した時、相手DFは右側に大きく偏ってしまったため、左側に大きなスペースが生まれています。
これは#4が相手をおびき寄せて、逆側にスペースを開けさせたともたら得ることができます

#2はこのスペースを見つけ#1を飛ばし、逆サイドの#3へボールを出します

#3はボールを止め、確実に#5へと繋ぎました

ビルドアップ時にボールが詰まり後ろへボールを戻す時、ただ戻すのではなく空いているスペースを見つけてビルドアップをやり直すことを心がけてください。上記のようにサイドで詰まれば必ず逆サイドは空いているものです

#5と#6のサイドにボールが渡ったら、#3と#4は ポジションをすぐに#5#6側に移動し再度ボールを保持し反対側のエリアを目指してプレーを続けてください

ここで安心して途切れないように。判断が早ければDFの体制が崩れているので連続して反対のエリアへボールを展開することが可能です。このチャンスも見逃さないようにしてください

 

ビルドアップ練習のまとめ

大事なのは、無理をしないことです

安全なルートを見つけ『判断』し確実にボールを前方へ運べるようにしてください

トレーニングの難易度は広さで調節できます。うまく繋がらないようなら広くしてください

 

また、サイドチェンジの有効性について理解するようにしてください

特に日本の場合、サイドチェンジが遅く有効で無いようです

サイドチェンジが下手くそな日本のサッカーについてもスペイン人から聞いた話を今度書きたいと思います

この判断を伴う練習をしながら ビルドアップのレベルを上げてください

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントする