J下部と中体連は別のスポーツ?

次男がジュニアユースに上がり1年が経とうとしています
ジュニアユースから入ってきたパパたちと話すと『今までのサッカーと全く違う』という話をよく聞きます

J下部のサッカーは何が違うのか?
中体連の試合と比較するとそれぞれの特徴がよくわかってきます
先に書きますが、これはどちらが良いかという話ではありません
それぞれのサッカーの特徴を理解し親が子供の成長の参考に役立ててもらえればと思います

 

J下部と中体連 同じスポーツ?

中体連のサッカーはロングキックが多いよね?
どうしてJ下部のサッカーはボールが弾まない?

そんな疑問を持ったことはありませんか

今年 次男の友人が中体連の県大会で見事に優勝しました
その試合を見ていましたが みんな一生懸命体を張り頑張っているし技術もあります。でもなんだかすごい違和感を感じた試合でした。

今までも高校サッカーとU18プレミアリーグの試合でも同じような違和感を感じていましたが、理由はわかりません。うまく言い表せないが同じルールのスポーツだけど違うスポーツのような、、、
そんな違和感です

それがこの中体連の試合とJ下部がやっている試合を比べてみて、何が違うのかわかってきました

 

パスの本数と成功率

中体連の試合を何度か見るうちに 『パスが少なくないか?』と思うようになりました

実際に動画をみながら数えてみた結果が下記の内容です

両方とも開始から20分のデータですが
埼玉栄中が65本 柏レイソルU13は151本 パスを試みていました
その差は2倍以上

さらに パスの成功率は
埼玉栄中が49.2% 柏レイソルは87.4%
パスの成功本数にすると
埼玉栄中が32本 柏レイソルは132本
成功本数では4倍以上違っています

これがずっと感じていた違和感の正体です

パス成功率が低いので ルーズボールが多くなりディエルが増え ボールがバウンドして浮き玉が多くなります。競り合いの中でボールを扱うためパスでなくクリアが多くなり、ロングボールが増えます

また、中体連の試合ではボールを奪った後、サイドを変えることがほとんどありません
ボールを奪ったら狭いスペースでもすぐに前に仕掛けにいきます

上の図のように 中体連の試合では相手が多くスペースがなくても同サイドから前に進んでいきます

そのため フリーで受けるというより体をぶつけ合いデュアルが毎回発生します

J下部の場合 同じような場面では

ボールを奪った#4は前にスペースがない場合 ボールを失わず確実に前に進めるためです逆サイドへの展開を選択します

こういうプレーが随所にあるので必然的に中体連の試合よりパスの本数と成功率の違いが出てきます

これを見ると、

『育成のためには1対1を選択すべきだ』

『逃げるパスは育成にならない』

という意見も出てきます

確かに個を鍛えるには前に仕掛けるのも良いと思います

しかし、最も重要なのは選択肢の中から『判断』をしたかどうかだと私は考えます

#4の選手がボールを奪い、逆サイドへの選択肢もわかっていながら 前を選択したのか?
逆サイドへの選択肢は見えずに ただ前を選択したのか?

この2つは大きな違いがあります

猪のように前にすすむ意識が強すぎるとパスも減りパス成功率も下がり体のぶつけ合いになります

そうなると体が大きいチームが有利なゲームになってしまいます
そのサッカーが私たちの目指すサッカーなのでしょうか?

 

日本が目指すサッカー

さっきのデータをJリーグのデータに置き換えて比較してみます

20分の集計のためJリーグのデータに合わせるよう4.5倍にて90分換算してみました

2019年シーズンJリーグでのパスの1試合平均は470
中体連の埼玉栄中は90分換算で293本 Jリーグ平均の62%しかパスを出していません
成功率もJリーグ平均77.5%に対し49.2%しかありません

先に述べたよう パスを繋ぐという判断を伴わない、パスが選択肢の下位にある場合この数字は仕方がないことです

対して、柏レイソルU13は
Jリーグ平均470本に対して680本と約1.5倍のパスを記録
成功率も10%以上高い数字をあげています

これだけみても何を求めているのかがわかりますよね

これは技術の差ではなく 指導方針の違いだと思います

これだけパスの本数、成功率が違うと 違うスポーツに思えてしまうのも納得できます

では、どちらが正しいサッカーなのでしょうか?

私はサッカーに正しい正しくないは存在しない。同じルールでやっているものはどちらもサッカーとして正解だと思っています

しかし、自分の息子が育成年代で行うサッカーだとしたら
どちらが良いかというと話は変わってきます よね?

 

世界から見た日本人のサッカー

Jリーグでのパス本数と成功率のデータを見ましたが、世界ではどのような状況になっているのでしょう

下記は2018年ロシアW杯のデータです

1試合あたりのパス本数を多い順に並べています

1位はやはりスペイン。908本で89.6%と飛び抜けています
ただし最近の傾向でパス本数が高く成功率が高いということは自陣でのパスが多く効果的なパスは少ないと取ることもできます。優勝したフランスはパス成功本数では18位の482本で成功率は8割を切っています

日本はパス本数548本で10位 成功率82.6% Jリーグより2割ほど高い数字です

注目すべきは32チーム中最下位のイランでさえパスは少ないが60%以上の成功率があることです

 

次にパス成功率の高い順に並べた表です
ベスト16に入った国のみを記載しています

ベスト16に入ったチームはパス成功率30位のロシアで69.4%他は全て70%以上です

パス成功率50%だとサッカーにならなくなります
成功率が50%しかなかったら体のぶつかり合いになります

現に上記の表を見てもらえば分かる通り
パス成功率が低くでもベスト16に上がっている国は平均身長が高いです

スペインからポルトガルまではベルギーをのぞき全て平均身長は高くありません

そいう国はフィジカル勝負にならないよう マイボールを確実に前に進めるために判断を要するパス選択しているのだと思います

我々日本人は平均身長32ヵ国中30位 そんな日本人が世界で勝つにはフィジカル勝負にならないパスを選択する必要があるのです

J下部はそこで活躍できる選手の育成を目的としています だからパスの判断に重点を置いているのです

 

とは言っても 全てがサッカー

中体連の試合を見たときの違和感について色々と書きましたが

実際 試合をしたらどっちが勝つかわかりません

パス一つの数字をとっても 育成やチームの特徴、世界での日本の立ち位置など 色々な要素が見えてくるのが面白いところです

この辺のことがわかって育成しているコーチがついてくれると親は色々と安心できます
今年は高校サッカーの監督やコーチとたくさん話す機会がありましたが、若く優秀なコーチはこういうデータも理解しながら指導していました

こんな親が増えるとコーチは大変ですが 日本の未来のために子供たちの可能性を潰さないで欲しいです

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3件のフィードバック

  1. いつも親子共々お世話になっております。

    更新楽しみにしておりました(笑)

    わかりやすい説明でとても勉強になります!

    合点がいく内容でしたので、私自身もスッキリしました。

    次回の試合観戦が楽しみです!

    • お疲れ様です
      本業が忙しくてすっかり更新怠ってました
      カウントして数字にしてみるとパス本数と成功率は驚きの数字ですね

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